「羊をめぐる冒険」の翻訳(99)
6 日曜の午後のピクニック(5)彼女は笑って猫を抱きあげ、そっと床に下ろした。「抱いて」
我々はソファーの上で抱きあった。古道具屋で買い込んできた年代もののソファーは布地に顔を近づけると古い時代の匂いがした。彼女の柔らかい体が、そんな匂いと溶けあっていた。それはぶんやりとした記憶のように優しく、暖かかった。僕は指で彼女の髪をそっと払い、耳に唇をつけた。世界が微かに震えた。小さな、本当に小さな世界だった。そこでは時間がおだやかな風のように流れていた。
僕は彼女のシャツのボタンを全部はずし、手のひらを乳房の下に置いてそのまま彼女の体を眺めた。
「まるで生きてるみたいでしょ」と彼女が言った。
「君のこと?」
「うん。私の体と、私自身よ」
「そうだね」と僕は言った。「たしかに生きてるみたいだ」
本当に静かだ、と僕は思う。あたりにはもう物音ひとつしない。我々以外の全ての人々は秋の最初の日曜日を祝うためにどこかにでかけてしまったのだ。
「ねえ、こういうのってとても好きよ」と小さな声で彼女が囁いた。
「うん」
「なんだか、まるでピクニックに来てるみたい。とても気持いいわ」
「ピクニック?」
「そうよ」
僕は両手を背中にまわして、彼女をしっかりと抱いた。そして唇で額の前髪を払い、もう一度耳に口づけをした。
「十年って長かった?」と彼女は僕の耳もとでそっと訊ねた。
「そうだね」と僕は言った。「とても長かったような気がするな。とても長くて、そして何ひとつ終ってない」
彼女はソファーの肘かけに載せた首をほんの少しだけ曲げて微笑んだ。どこかで見たことのある笑い方だったが、それがどこでそして誰だったのかは思い出せなかった。服を脱いでしまった女の子たちにはおそろしいくらい共通した部分があって、それが僕をいつも混乱させてしまうのだ。
「羊を探しましょう」と彼女は目を閉じたまま言った。「羊を探しだせばいろんなことがうまくいくわ」
僕はしばらく彼女の顔を眺め、それからふたつの耳を眺めた。柔らかな午後の光が、古い静物画のように彼女の体をそっと包んでいた。
她笑着抱起猫,轻轻地放到地板上。“抱着我。”
我们在沙发上抱了起来。从旧家具店买来的有年代痕迹的旧沙发,每当脸贴近沙发面时就能闻到旧年代的味道。她柔软的身体和那种味道溶在了一起。就像是模糊记忆那样很舒适,很温暖。我用手指梳着她的头发,用嘴唇吻着她的耳。世界在微微地震动。小的、不能再眇小的世界。在那里时间就像是温存的风那样流动着。
我把她的衬衣扣子全打开,把手掌放到她乳房的下面,看着她的身体。
“看起来像是正在生长那样。”她说。
“你的?”
“是的。我的身体和我的自身。”
“是的。”我说。“确是就像正在生长那样。”
这里也太安静了。我想。周围一点声音都没有。我们周围的所有人都在什么地方活动着庆祝秋天的第一个星期日。
“哎,这样抱在一起非常喜欢。”她用小声嘟囔着。
“什么?”
“没什么。简直就像是郊游。心情非常好。”
“郊游?”
“是的。”
我把两只手放到其后背,把她紧紧抱着。然后用嘴唇撩着前额的头发,又一次用嘴吻着耳朵。
“十年的话,长不长?”她在我的耳边轻轻地问。
“是的。”我说。“感到非常长。特别长,而且没有一个终结。”
枕在沙发扶手上的头稍微弯曲一点微笑着。像是在什么地方见过的笑法。实在想不起来那是在什么地方到底是谁的笑?脱掉衣服的女人们恐怕都有共同的部分,经常让我不知所措。
“去找羊吧,”她闭着眼睛说。“若是能把羊找出来,各种事情都会向好的趋势发展。”
我望了一会儿她的脸,然后看着她的两个耳朵。柔和的午后的光线轻轻地包裹着她的身体,像是古老的静物画那样。
两人的世界,安静、自由,也幸福。