「羊をめぐる冒険」の翻訳(60)
3 歌は終りぬ(9)僕は二本の缶ビールを飲んでしまうと、空缶をひとつずつ、かつては海だった埋立地に向けて思い切り放った。空缶は風に揺れる雑草の海の中に吸い込まれていった。それから僕は煙草を吸った。
煙草を吸い終る頃に、懐中電灯を持った男がゆっくりとこちらに歩いて来るのが見えた。男は四十歳前後で、グレーのシャツとグレーのズボンをはいて、グレーの帽子をかぶっていた。きっと地域施設の整備員なのだろう。
「さっき何かを投げていたね」と男は僕の脇に立ってそう言った。
「投げたよ」と僕は言った。
「何を投げたんだ?」
「丸くて、金属でできていて、ふたのあるものだよ」と僕は言った。
警備員は少し面喰ったようだった。「何故なげたんだ?」
「理由なんてないよ。十二年前からずっと投げてる。半ダースまとめて投げたこともあるけど、誰も文句は言わなかった」
「昔は昔だよ」と警備員は言った。「今はここは市有地で、市有地へのゴミの無断投棄(とうき)は禁じられてる」
僕はしばらく黙っていた。体の中で一瞬何かが震え、そして止んだ。
「問題は」と僕は言った。「あんたの言ってることの方が筋がとおってることなんだよな」
「法律でそう決まってんだ」と男は言った。
僕はため息をついて、ポケットから煙草の箱を取り出した。
「どうすればいい?」
「拾ってこいとも言えないだろう。あたりは暗いし、雨だって降りかけてる。だからもう二度とものを投げないでくれ」
「もう投げないよ」と僕は言った。「おやすみ」
「おやすみ」と言って警備員は去っていった。
僕は防波堤の上に寝転んで空を見上げた。警備員の言ったように、そろそろ細かい雨が降りかけていた。僕はもう一本煙草を吸ってさっきの警備員とやりとりを思いかえしてみた。十年前には僕はもっとタフだったような気がした。いや、そんな気がするだけのことかもしれない。どちらでもいい。
川沿いの道に戻ってタクシーをつかまえた頃には霧のような雨になっていた。ホテルまで、と僕は言った。
「旅行ですか?」と初老の運転手が言った。
「うん」
「こちらは初めて?」
「二度め」と僕は言った。
我喝完两罐啤酒后,把空罐一个个地狠狠地抛向原来是海的填海地。空罐钻进了在风中摇动的草的海洋中。然后我抽上了烟。
抽完烟的时候,我看到拿着怀灯的男人朝这里缓缓走来。男的约四十岁左右,他穿着灰色的衬衣和灰色的裤子,还戴着灰色的帽子。这肯定是这个地区的设施管理员了。
“刚才你扔了什么东西?”那男的站在我的旁边说。
“是扔了。”我说。
“你扔了什么呢?”
“是圆的,金属制作的,还有盖子。”我说。
管理员有些紧张似的。“为什么要扔呢?”
“也没有什么理由。从12年前就一直扔。还有收集半打扔出去的事呢,也没有谁来管呀。”
“那是以前的事了。”管理员说。“现在这里是市管地了,禁止随意向市管地扔垃圾。”
我沉默了一会儿。身体内有什么东西一瞬间震动了一下,马上又停止了。
“问题是,”我说。“你所说的也在理呀。”
“这有法律规定。”男的说。
我叹口气停顿一会儿,从口袋里拿出了香烟盒。
“那你说怎么办呢?”
“这也不用你捡起来。周围一片黑暗,还在下着雨。请不要再扔东西了。
“我再不扔东西了。”我说。“晚安。”
“晚安。”说后管理员走了。
我躺在防波大堤上仰望天空。就像管理员刚才说的那样,慢慢地下起了毛毛细雨。我又吸了一棵烟,回想起了和管理员的谈话。十年前我还是那么健壮。也只是自己的感觉吧。什么都一样。
回到了河边的道上打上出租车的时候雨大的就像雾那样。我就说去宾馆。
“你在旅游吗?”刚入老年的司机说。
“是的。”
“第一次来这里吗?”
“是第二次了。”我说。
回到老家,回到故乡,不同人不同时间,心里、情绪等也自然是不同的。
过年了 ,亲爱的各位朋友,你也要回家了。
祝各位新春佳节幸福愉快!